2024-06-18

高校生向け留学奨学金の壮行会・事前研修会に参加した記録

2024/6/8(土)・6/9(日)で、トビタテ!留学JAPAN新・日本代表プログラム高校第9期の壮行会・事前研修会にサポートスタッフとして参加してきました。普段の生活では得ることのできない気づきや刺激がたくさんあったので、ここに記録を残しておこうと思います。(2日間参加したにもかかわらず、一枚も写真を撮っていなかったので、その備忘も兼ねています…)

トビタテ!留学JAPAN(以下、トビタテ)は文部科学省が展開する留学奨学金制度で、返済不要の奨学金に加えて事前・事後の研修および奨学生(トビタテ生)コミュニティがセットになったプログラムです。トビタテ自体に留学制度は含まれず、応募者それぞれが留学計画を作成・提出し、それに対して支援を得られるのがトビタテの特徴です。自分は大学生コースの第6期生で、このおかげで手出し無しでベトナムへ1年間の交換留学に行くことができたため、足を向けて寝ることのできない大変にありがたい制度です。プログラムを運営する事務局の方々、そして奨学金を拠出してくれた支援企業の方々には本当に頭が上がりません。

事前研修会のサポートスタッフの仕事は、高校生が6人1組で取り組むグループワークのサポーターとして、ファシリテーションやフィードバックを行うというものでした。基本的に高校生主体で進めてもらうので、ニコニコして話しやすい雰囲気を作ることが主な役割です。気の利いたコメントをしたり、コーチングのようなコミュニケーションを取ることは得意ではありませんが、自分が協力したことで少しでも研修の成果が増えていたら嬉しいなと思います。自分は今年28歳になるので、高校1年生とはちょうど一回り差(!)ということも驚きでした…。

なお、研修会の講師も同じくトビタテ生で、教育系の分野で活躍している方が担当されていました。年齢的には同世代になりますが、講師として研修のコンテンツを考え、資料を用意し、100名を超える高校生相手に堂々と話をしている姿には刺激を受けました。同世代の友人の仕事の話を聞くことはありますが、実際に働いている姿を直接見る機会はなかなかないので、非常に新鮮な体験でした。講師の方の明快かつ流暢な話しぶりを見て、改めて自分の話の下手さも認識したので改善しようとも思いました…。

トビタテの応募にあたっては単に海外留学に行くだけではなく、現地での自主活動を計画する必要があります。この2日間は様々な留学計画と目的、およびそのバックグラウンドを聞きました。高校での留学は基本的に所属する学校で提供されるプログラムに参加するか、留学エージェントを利用するかのどちらかで、期間も2週間~1カ月程度と大学での留学に比べて短いことが多いため、計画に独自性を出すのが難しそうでした。その中でも各自が課題や目的を見出したうえで自主活動を計画していて、選考を通過しているだけあってレベルの高さを実感しました。特に印象に残ったのはフードロス削減をテーマにした計画で、テーマ自体に目新しさは無いものの、「フードロス削減という言葉はよく耳にするし、削減の取り組みも珍しくない。だからこそ、削減のために何かアクションを起こすのではなく、まずはフードロスの存在自体をより身近に感じられるようにすることが必要なのではないか?」という問題提起をしていて、教科書的な受け売りをするのではなく、本当に自分の頭で課題について考えているのだと感心させられました。

高校生たちのバックグランドの話を聞いていると、やはり留学志望する背景には経済的に裕福であったり、文化資本の充実した家庭があることがほとんどで、奨学金プログラムとはいえ教育格差の存在は強く意識させられました。海外経験はおろか、留学経験自体が今回初めてではないという人も珍しくなく、「去年はアメリカ、今回はイギリス、来年はアフリカでボランティア…」といった具合で海外に行っている人もいるようで驚きました。(自分よりも全然経験が多い。)身分の差というのは言いすぎだと思いますが、少なくとも自分が高校生の頃は「そういう経験をしている高校生がいる」ということすら知らなかったので、世間が広いことを実感します。もちろん、相応の所得を得た親が子どもに対して質の良い教育を施すことは当然の権利だと考えているし、トビタテ自体も教育格差の是正を主眼においたプログラムではなく、「意欲と能力のある全ての日本の若者が、海外留学に自ら一歩を踏み出す機運を醸成すること(*1)」を目的としていますが、この「意欲と能力」というのは家庭環境ひいては家庭の経済的資本・文化的資本に依ることを認識させられました。大学における推薦入試やAO入試の是非もよく議論されていますが、確かにこういった状況を鑑みると筆記試験の方がまだ公平なのではないか?とも思います。

その一方で、留学する高校生たちが経済的・文化的に恵まれていて全てが順風満帆、というわけでもなく、彼ら(彼女ら)は彼らなりに孤独感であったり、不安や葛藤を抱えているようでした。特に高校での留学がまだ一般的でないこともあり、学校内あるいはグループ内で孤立したり、親戚や周りの人からの反対にあうことも珍しくないようで、「今回研修に参加して同じ志を持った仲間がたくさんいることを知ることができてよかった」と語っているのが非常に印象的でした。また、そういった意味でトビタテコミュニティの存在意義があるということも新しい発見で、意識の高い人・声の大きい人が中心となっている印象の強かったコミュニティの見え方が少し変わりました。

自分がこの研修会に参加するのは昨年に引き続き2回目でしたが、高校生だけでなくトビタテの事務局の方であったり、同じトビタテ生であったり、普段接することのない人たちと話す機会を持つことができて、毎回新しい発見と多くの刺激をもらっています。もしこのブログを読んで研修会への参加に興味を持ったトビタテ生がいたら、ぜひ応募してみてください!自分も予定が合う限りは来年以降も積極的に参加したいと思っています。

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。


*1: 2024年度(第9期)派遣留学生募集要項 を参照

*トップ画像・サムネイル画像引用元: https://tobitate-mext.jasso.go.jp/newprogram/